2024.11.01

再雇用?転職?人生100年時代のセカンドキャリア

「再雇用か転職か」という選択肢は、最終キャリアにおいて重要かつ複雑な決断です。
この選択は個々のライフステージ、価値観、目指す目標によって異なりますが、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
以下にそれぞれの特徴と見極めポイントを整理します。

1. シニア層の就労実態

この30年で、シニア層全体を取り巻く就労環境は大きく様変わりしています。
1990年より段階的に施行されている高年齢者雇用安定法は、企業の定年の引き上げもしくは再雇用促進の議論を加速させ、直近2021年の改正では65歳までの雇用確保が義務化されています。
これにより、現在の日本において60歳以降も働き続けることが当たり前のこととして浸透しつつあります。
事実、2022年調査によれば、60歳以上の87.1%が制度を利用して雇用を継続し、その結果、60歳以上就労者は2009年に比べおよそ2倍の441.7万人にまで増加しています(厚生労働省調査)。

これに伴い、シニア層の転職市場は近年大きな変化を迎えています。
特に、少子高齢化や働き方改革、ライフステージの多様化が影響し、シニア層の労働市場における価値が進化しています。
かつては「年齢が高いと転職は難しい」とされていたシニア層転職ですが、法改正を発端に企業側の意識も変わり、今では高い経験値を持つ即戦力としてシニア層を求める声も多くなりました。
企業成長を支えるための戦略的な知識を活かしたアドバイザリー的な役割が重要視され、シニア層に特化した転職の動きも増えています。

2. 再雇用のメリット・デメリット

再雇用は、定年を迎えた後も、同じ企業や業界で働き続ける選択肢です。
再雇用にはいくつかの特徴があります。

●再雇用のメリット

― 安定性と安心感
既存の企業での再雇用は、給与や待遇が安定しており、企業文化や業務内容にも精通しているため、精神的に安心感を得やすいです。

― ネットワーク維持
企業内で長年築いた人間関係や業務ネットワークを維持できます。
そのため、これまでと同様に仕事がスムーズで進めやすいことがメリットとしてあげられます。

― 福利厚生の継続
企業によっては、再雇用後も一定の福利厚生が継続されることがあります。
健康保険や年金制度などが引き続き利用できる場合も多く、社会保障面での安定もメリットです。

― 仕事の負担軽減
再雇用の場合、役職が降格されることもありますが、その分責任が軽くなることが多く、無理なく働ける可能性があります。
また、通常フルタイムではなくても、契約社員や非常勤としてのポジションも提供され、仕事のペースや負担が自分のライフスタイルに合わせやすくなります。

●再雇用のデメリット

― 給与水準の低下
再雇用後は、役職が解かれることにより大幅に給与が低下することが一般的です。
また権限等も限られてくることから、活躍されていた方ほどこれまでとの違いを痛感し、モチベーションが下がる傾向にあります。

― キャリアの停滞感
役割が限られているため、新しいスキルの習得やキャリアの成長が難しくなることがあります。
良くも悪くも従来環境からの延長線上に過ぎず、キャリア発展を望む場合には物足りなく感じることも。
また、再雇用期間が限られるケースも多く、生涯現役を希望する方にとっては先細ることもデメリットです。

― 立場の変化への対応
役職を解かれた場合には、これまでと同じように経営や事業へ関与することは難しくなります。
例え自身が手塩にかけた事業であっても、新リーダーにより方針転換があれば従わざるを得ないケースに直面します。
場合によっては、かつての部下からの指示で業務を進めることにやり難さを感じることもあるでしょう。

3. 転職のメリット・デメリット

転職は、挑戦の選択肢です。
リスクは伴いますが、新たなキャリアのスタートやスキルアップ、年収アップなど多くのメリットを享受できることが何よりも魅力です。

●転職のメリット

― 報酬や条件の改善
転職を通じて、給与や待遇が改善される可能性があります。
特に、特殊なスキルや経験を持っている場合は、新しいポジションを得ることによって待遇が大幅に向上することもあります。

― セカンドキャリアの構築
転職は新しい環境でのスキルや知識を積む機会を提供します。
自身の経験や専門知識を他の企業で活かすことができれば、キャリアの幅を広げることができます。
人生100年時代と考えればまだ先は長く、定年のタイミングで向こう10年を見越したセカンドキャリア形成を考えることは、理にかなっていますしチャンスとも言えます。

― 価値観の再構築
新しい企業で新しい文化や考え方に触れることで、より活気のある環境や多様性のある職場で働くことができるかもしれません。
また、今後のキャリアに対しても、自身だけでは発想できない新たな気づきやビジョンを得ることもできます。

●転職のデメリット

― 不安定さとリスク
転職は新しい環境での適応が必要であり、最初は不安定でリスクが伴います。
その企業において新たなネットワークを一から構築する時間や労力が必要で、不確定要素にも左右されます。
特に年齢が高くなると、新しい職場で求められるスキルや役割に対する適応について不安が強く、失敗したくないとの思惑からキャリアチェンジに踏み切れない方も多くいらっしゃいます。

― 企業文化への適応
新しい職場の企業文化にうまく適応できるかどうかは大きなポイントです。
特に、企業のペースや価値観が自分に合わない場合、働き続けるのが難しくなることもあり、正しく見極める必要があります。

― 年齢によるハードル
年齢を理由に不利に扱われる可能性があります。特に若い社員が多い職場では、年齢によるギャップを感じるケースも散見されます。
ただしこれらは企業スタンスによるところが大きく、冒頭のとおり即戦力としてシニア層活用を考えている企業ではこの限りではありません。
体制や方針などが明確で、年齢ではなく経験や役割を重視していることが大きく影響しています。

4. 再雇用 vs 転職

再雇用と転職のどちら良いのかは、以下の要素に基づいて自身の志向を踏まえて考えることができます

― キャリアの目標
キャリアをさらに成長させたい、スキルを活かして新しい分野で挑戦したい場合は、転職が良い選択です。
反対に、一定の安定を求め負担を軽減したい場合や、キャリアの充実とは別の目的をもっている場合は、再雇用が適しているかもしれません。

― リスク許容度
新しい挑戦や不安定さを受け入れ、リスクを取ることができるなら、転職の方が魅力的です。
安定した環境で引き続き働き、リスクを最小限に抑えたいなら、再雇用が良い選択です。

― ライフスタイルやワークライフバランス
自分のライフスタイルに合わせて柔軟な働き方を望む場合、転職先により柔軟な勤務形態が選べることが多いため、転職が適していることもあります。
逆に、安定して同じ企業内で働くことが好ましい場合は、再雇用が理にかなっています。

― 年齢と市場価値
年齢が高く、転職市場での競争力に不安がある場合、再雇用の方が比較的安心感があります。
しかし、もし転職市場で高く評価されるスキルセットがあるなら、転職を選ぶことで報酬や待遇が改善する可能性があります。

5. まとめ

再雇用か転職かの議論は、それぞれにメリットとデメリットがあることから、その選択は個々のライフステージやキャリアの状況、そして将来のありたい姿に大きく依存します。
そのため、「どのようなセカンドキャリアを送りたいか」を自問自答し、自身で意思決定することが大変重要です。

ここでひとつアドバイスをするとすれば、もし「転職」を選択する可能性が高い場合、その意思決定は早いほうが良いかもしれません。
「50代で転職した60代」を対象としたある機関の調査では、「50代前半」で転職した方は「50代後半」で転職した方より、現在の仕事に対する満足度が高い傾向にあることがわかっています。
個人差はありますが、一般的に加齢によって気力体力は低下傾向にあるため、積極的に動けるうちに納得のいくセカンドキャリアを形成することが、その後の人生においても重要な意味を持つことが示唆されています。

定年=ゴールという価値観から、定年=新たなスタートとする意識の変革は、簡単に切り替えられるものではありません。
多忙を極める世代でもありますから、将来に向けてじっくり考える余裕が持てないのも現実です。
ですが「その時」が確実に訪れることもまた事実です。

 「定年後のことは漠然としている」
 「何も準備できていない。何から手をつければよいのかわからない」
 「ある程度考えてはいるが決断しきれない。本当に良いのか判断できない」

そんな時こそ私たちエージェントがお役に立てるものと考えています。
これまでの経験と実績を交え、皆さまのありたい姿を一緒に整理しながら形にしていきます。
どんな些細なことでもまずはお気軽にご相談ください。